舌の位置と動きの大切さ

2024年06月22日

舌の正しい使い方を知っていますか?

私たちは、自転車の乗り方や運転の運転の方法は誰かに習い、練習して習得します。ですが、生きていくための体の使い方については、なんとなく使っており、適切に使えているかを振り返ることはあまりありません。病気になったり、不調が出て初めて、それを見直すことがあったり、その使い方が間違っていたということに気づかずに、薬やほかの治療法に頼ることがあります。

 

正しい舌の位置の図

口の中の疾患にとって、意外と重要なのは「舌の位置と動き」なのです。この舌の位置は、歯並びにとってとても大切です。適切な舌の位置は、舌先が上あごにくっついている状態です。その位置に舌があると、上あごの幅が広くなり、十分に歯が並ぶスペースが確保できるように成長が促されます。

舌の位置が正しいとメリットいっぱい

 歯ぎしりや食いしばりにとっても、舌の位置が上にあることは有利に働きます。舌が上にあると、歯をかみしめること自体しにくくなります。自然に歯ぎしり、食いしばりがなくなる可能性が高くなります。すると、それが原因でおこる顎関節の痛みや不調も改善につながっていきます。また、奥歯が大人の歯に生え変わる時期に食いしばりがないことによって大人の歯の頭の部分が十分に出てきて、前歯の噛みこみが見た目も機能的にもちょうどよいものになると考えられます。さらに食いしばりによる、歯槽骨の異常な吸収や、循環不全による歯周病の誘発や歯が割れたり折れたりすることも回避できるので、歯の寿命もぐんとアップします。

舌の位置を整えて筋力アップ

 そうして、舌の位置が上に保持されるには、舌自体の筋力が必要になります。多くの現代人は、舌が下に位置しており、筋力アップすることのメリットがあります。大きく口を『あ』『い』『う』と動かしたり、『えー』と舌を前に出す運動をしたり、食事をするときに舌の後ろ側を動かし奥歯を使ってしっかり噛んで食べることをすることで十分に舌の筋肉は育ちます。そして、普段いつでも舌が上あごにくっついている状態が保持できるようになれば、多くの口の中の問題は少なくなります。よく噛めることで、胃腸の調子も改善されます。

口呼吸をする男の子の絵口呼吸をする男の子

 上あごに舌がくっつけられることにより、「鼻呼吸」がスムーズにできるようになります。鼻は「自然のマスク」と呼ばれ空気の汚れを浄化しきれいであたたかい湿った空気を肺に運んでくれます。そうすることで、体の免疫機能は正常に保たれやすくなります。反対に「口呼吸」になると、冷たく乾燥した空気が直接入ってくるので、体が免疫機能を発動しなければなりせん。また、口の中は水分を奪われることになり乾燥して、唾液による殺菌、消毒作用が働きにくくなり、虫歯や歯周病、口臭につながる可能性が高くなります。また「口呼吸」の場合、筋力が足りず口がポカンと開いてしまします。すると出っ歯や受け口などの噛み合わせのフグ阿合にもつながります。「口呼吸」をしているかどうかの目安として。、唇が乾燥すること、朝起きたときにのどがイガイガするなどがあります。睡眠時にいびきをかいている方も、舌が下がっていることが多いので、舌の筋力をアップすることで改善を見込むことができます。睡眠の質が上がり、生活の質が良くなることでしょう。お口の病気だけではなく、全身の健康につながるので、「鼻呼吸」をすることはおおきなメリットがあります。

口腔機能の維持は健康長寿につながります

 このように舌の位置が上に保持され、舌の動きが適切にできるようになること、お年を重ね歯を失う可能性は大幅に減少しますが、もし、失ってしまったとしても、入れ歯を入れなければいけない状態になっても、入れ歯を上手に使える舌や口腔機能が備わっているので、快適に入れ歯を使いこなすことができることにつながります。筋肉の動きがよくなることで、誤嚥性の肺炎を予防することにもつながるので、よくむせるようになった方も試してみる価値はあると思います。また入れ歯がうまく使えない、浮き上がってきてしまうという方は、入れ歯の調整とともに、舌の位置を確認してみましょう。

 歯磨きや食習慣の改善とともに、舌の位置・運動を正常に機能させることは小さい習慣かもしれませんが、24時間ずっと行われていることなので、大きく健康に影響を与えます。少し意識してみると意外と大きな改善につながると考えています。

文/歯科医師 樋口 有里子

 

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