2023年12月01日
虫歯になるメカニズム
虫歯というのはお口の中にいる『ミュータンス菌』という細菌による感染症です。お口の中は何も食べていないときは中性ですが、食べ物や飲み物が入ってくるとミュータンス菌がそれをエサとして酸を排泄し、酸性に傾きます。
酸性になると歯の表面の硬いミネラルの組織が溶けてしまいます(脱灰)健康なお口の中の状態ならば、しばらくすると唾液の力で中性に戻り、歯の表面はふたたびミネラル分が修復され元の状態に戻ります(再石灰化)
このバランスが崩れて酸性の状態が長く続いて、溶け出す方が多くなってしまうと、修復が間に合わず歯の表面に穴が開いてしまいます。これが虫歯の始まりです。
虫歯の進行状況と治療方法
虫歯は進行状況によって、治療法が分かれてきます。
②C1:エナメル質の層までの虫歯 痛みは感じられません。欠損した歯が自然と治ることはないので、虫歯を取り除いてプラスチック樹脂でつめる処置をします。
③C2:象牙質の層まで進んだ虫歯 冷たいものや甘いものを口にしたときに「ズキッ」「ピリッ」とした痛みを感じます。虫歯を取り除きプラスチック樹脂を詰めるか、金属の詰め物で補修します。
④C3:歯髄まで進んだ虫歯 何もしなくても痛みが続くことあります。神経に細菌が感染してしまっています。そのままにしておくと神経が腐って歯の根っこの先まで炎症が波及して痛みや歯槽骨を溶かしてしまうことがあるので、神経を取り除き(神経を抜くとも言います。)神経が入っていた歯の根っこの中身をきれいにして、細菌が入ってこないように根っこを詰めます。その後、壊れてしまった歯冠を修復します。※痛みが継続的になくても虫歯が神経に達していることもあります。
⑤C4:歯根まで進んだ虫歯 虫歯が歯冠を崩壊させて歯根まで及んでいます。歯の中の神経が死んでしまっている場合が多く、歯根に感染が起こっていしまっています。熱いものを口にしたときに痛む場合、死んでしまった神経が腐ってしまって炎症を起こし膿が生じています。根っこの清掃をする必要があり、時には抗生物質を服用することで炎症を抑えることもあります。根っこの病巣が大きくなりすぎたり、虫歯で歯根の崩壊が大きいと抜歯をしなければなりません。
虫歯ができやすい所とお手入れ方法
歯の溝や隙間の汚れ |
デンタルフロスを日常のお手入れに取り入れて |
歯と歯茎の隙間を優しくブラッシング |
虫歯はできやすい場所があります。それは、汚れが溜まりやすい場所です。1つは、歯と歯の間です。隣り合う歯と歯の間はと歯ブラシでも掻き出せないこともあるので、糸ようじ・デンタルフロスを使っての歯磨きが予防に有効です。2つ目は、奥歯の歯の嚙み合いの面にある溝です。特に、若い人は溝が深いので食べたものが詰まりやすいです。スナック菓子やキャラメルなどくっつきやすいものが要注意です。3つ目に、歯茎と歯の境目の溝です。歯茎を傷つけないように気を付けながら、歯の生え際の汚れをきれいにする必要があります。歯並びがよくない場所は意識して磨いてあげることで対処します。
虫歯ができにくい生活習慣
また、歯磨きするだけではなく、歯がいつも元気でいられる環境が大切です。歯が硬い状態でいられる時間を長く保つことが予防には有効です。それは、お口に味のついたものを入れている時間を少なくすること、頻度を少なくすることです。たとえ量は少なくても回数が多いと歯が溶けやすい状態が長く続くことになります。せっかく体が中性に戻しても飲食するとまた酸性に傾くので、コーヒーやジュース、飴などをちょこちょこ食べることは注意が必要です。
唾液は歯が硬い状態でいられる環境に保ってくれます。その働きをよくするため、よく噛むことはとても役立ちます。噛むことで唾液の分泌量が促進されたり、唾液と食べ物がよく混ぜ合わさり、汚れとして歯に残ることが少なくなります。また、唾液で口の中が潤っているようにするために唇を閉じて鼻で呼吸をすることや唾液の質をよくするためにリラックスをしたり、免疫力を高めることも大切です。また、歯ぎしりや食いしばりの圧力による歯の亀裂からの虫歯を予防するためにも、リラックスすることや休息は非常に重要です。
文/歯科医師 樋口 有里子