歯周病ってどういうこと?

2023年11月14日

歯を磨いたときに歯ブラシに血がついていたり、歯茎がぶよぶよとして腫れたりしたことはありませんか?また、歯がグラグラして抜けてしまったとか歯茎がやせてしまったという話を聞いたことがある方も多いと思います。それは、歯周病とよばれる状態であることが多いです。

歯周病は虫歯と並んで歯の二大疾病のうちの1つで、虫歯同じように口の中の細菌によって引き起こされる感染症です。その感染による炎症が歯を支えている骨が溶けて吸収されていき、歯が抜けてしまうことにつながります。

歯周病の原因は主に歯の汚れ「プラーク・歯垢」です。歯垢はほとんどがの細菌の塊です。それが歯茎に触れる場所、つまり、歯と歯茎の境目にお掃除されずに残っていると歯茎は不快なのでその細菌を退治しようとして、免疫の働きをしている血液を集めて戦います。これが炎症です。症状としては赤く腫れたり、出血、膿が出る、嫌な臭いがするということが起こります。糖尿病などの全身疾患やたばこなどの生活習慣によって、体が炎症を起こしやすいということも歯周病を助長させることがあります。また、プラークに存在する細菌の中に歯周病に関わる細菌が多い人は歯周病になりやすくなり傾向があります。また、歯の表面に張るバイオフィルムと呼ばれる極薄の細菌の層によってもなりやすさが左右されます。

歯茎に炎症が起こっても、すぐにプラークが取り除かれれば炎症は一時的なものであり、すぐに治まり腫れは引きます。まずは、日常的に歯磨きで歯茎に触れる汚れをお掃除することが大切です。プラークが長く留まり硬くなって石のように固くなってしまったものが歯石です。歯石になると歯ブラシでは取り除けないので、歯医者に行って機械でお掃除することが有効になります。また、歯垢が長期間放置され膜になるバイオフィルムの状態になると、これも歯ブラシでは取り除くことは難しくなります。

細菌が長期にわたり存在すると、炎症によって腫れ盛り上がった歯茎が歯との間に溝を作ります。これを歯周ポケットといいます。ポケットに入ってしまったプラークが歯磨きで掻き出しにくく、さらに、歯周病の細菌は狭いところが大好きなでより繁殖していき、歯磨きだけでは炎症が治まらなくなります。症状としては出血や膿、口臭が出てきます。炎症によって細菌が退治されるだけならよいのですが、そこで生成される物質の中に歯茎の骨を溶かしてしまう働きのものも出てしまいます。骨が溶けていくに従い、歯周ポケットが深くなり、さらに炎症が起こりやすい環境になり、膿もできることになり、口臭や痛みにつながります。その状態が続くと歯を支える骨が少なくなってしまい、根っこのが弱い木のように、歯がグラグラして痛みがでたり、最終的に抜けてしまうということが起こります。歯にかかる噛む力が大きかったり、向きがふさわしくないと骨の吸収を加速する原因にもなります。

深くなってしまったポケットの中は歯ブラシで汚れを掻き出すことやバイオフィルムを除去することは難しいですので、専用の機械でお掃除して、できるだけ歯茎の炎症を抑えることで歯周病の進行を止めることが必要になります。

歯周病の治療としては、まずは全体のクリーニングです。歯磨きでは除去できない歯石やバイオフィルムを除去し、歯周ポケットの中を洗浄します。そこで歯肉の炎症が治まればこれでメンテナンスに入ります。それでも炎症が治まらない、ポケットが深いままであるときは、レーザーで歯肉を除去したり、歯肉で隠れているところに歯石がないか精査します。また、噛み合わせの良くない部分があれば噛み合わせを調整することで改善することを期待します。

いったん溶けてしまった骨が回復することは難しいので、定期的なお掃除をして現状を維持することが目標になります。このようなことを考慮すると、特別なことをするのではなく、毎日のお掃除の習慣を身に着けること、歯茎が気持ちよくいられるお口の環境を整えていることが、歯を快適に長く使っていくことにとって大切で、大きな財産になります。

近年、歯周病は全身疾患と相関関係があることがわかってきました。歯周病菌が口腔の粘膜から血液の中に入り体を流れると、体に悪影響を与えてしまうといわれています。その最も関連性が高いものに糖尿病があげられます。二つは相互関係にあり、歯周病が悪くなると糖尿病も悪化し、その逆もあると報告されています。そのほか、心筋梗塞や心内膜炎、脳梗塞、早産・低体重児出産、誤嚥性肺炎なども挙げられます。

お口の健康だけではなく、生活習慣や運動、食事で全身的な免疫を整えるとともに、笑ったりくつろいだり精神的にもリラックスをして免疫力を高めることも大変有効だと思います。

文/歯科医師 樋口 有里子

 

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