根っこの治療とかぶせ物について

2023年12月14日

お口の中は菌でいっぱいです。歯の表面の硬い組織は物をかみ砕くだけではなく内側にある神経や血管などを守ってくれています。虫歯が大きくなりその神経に近づき触れてしまうと、神経が菌に感染してしまいます。すると血液が集まってきて菌と戦いますが、菌に対して自分の免疫が負けてしまうと神経は死んでしまいます。その感染した死骸を排除しようと体は働き、歯の根っこの先で炎症を起こします。炎症が続くと膿が産生されて歯茎が腫れてきたり、歯が浮いたような感じがしたり、熱いものを食べると痛みが出たりします。これらが自然と痛みがなくなることもありますが、汚れた歯の中をきれにして空いたスペースを塞いであげることで感染を取り除き、痛みを取り除き、時に抗生剤を飲むことで炎症を抑えます。

これが根っこの治療です。段階として、まず虫歯の部分を取り除き、神経の入っている穴が見えるように歯を削ります。そして、根っこの管から神経を取り除き、膿がある場合は排出させます。根っこの管に殺菌作用のあるお薬をいれて管をきれいにします。1,2週間の間隔で症状が治まるまでお薬を交換し、最終的にゴムのような素材で菌が入ってこないように緊密に封鎖します。なので、根っこの治療は何回か通院してもらうことが必要ですし、根っこの先の膿が大きい場合には治癒に時間がかかったり、症状が全部消えない場合もあります。また、普段は症状がなくても体調がよくないときに症状が発生し痛みが出ることもあります。

歯の根っこは針のようにとても細く、奥歯は非常に見にくいことが多いです。また、奥歯にはひとつの歯に3,4本の根っこがある人もいたり、先が曲がっていたり、途中で二つに分かれていたり、個人差がありますが、レントゲンでも確認できないこともあります。症状が治まらない場合には目には見えないレベルでの感染源の取り残しも考えられるので根っこのマイクロスコープで診療されている歯医者さんに診てもらうことをお勧めします。根っこの治療は大変な上、神経を取ってしまうと歯への水分などの栄養分の供給がなくなり、根っこは枯れ木のようになってしまうので、歯の寿命自体が短くなってしまいます。歯科医療従事者としては、できるだけ大きな虫歯は作らないでほしいな、と願っています。また、根っこの先に炎症を起こしにくくするために、疲れはしっかり回復させて日頃の体調管理も重要だなと感じます。

歯の根っこの治療が終わると、壊れてしまった歯の頭の部分を修復する必要があります。根っこを土台として、柱をたててその上に帽子のようにかぶせ物をします。いわゆる差し歯といわれるのはこれのことです。根っこを詰めたあと土台の柱を立てて形を整えた後、型採りをして模型を作り、模型上でぴったりと合ったかぶせ物を作るという流れになります。多くは金属で作られますが、最近は硬いプラスチックの歯の色に近い素材でも歯の場所によっては保険作れるようになりました。保険適応でない審美性の高いものも選ぶことはできます。

神経をとってかぶせ物をした歯も、かぶせ物の下の歯の部分は虫歯になる可能性があります。歯の根っこの部分が虫歯で大きくなくなったり、根っこが割れてしまったらかぶせ物ができずに、

抜いてしまわなければならなくなります。ですので、長くご自身の歯を使っていただくために、かぶせ物と歯の境目の汚れはしっかりときれいにしていただきたいと思ってます。

文/歯科医師 樋口 有里子

 

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