噛み合わせの大切さ

2023年12月25日

歯は上と下に分かれて、前歯・犬歯・奥歯が向かい合って生えています。その上下の歯がかみ合わさることで、食べ物を食いちぎったり、すりつぶしたりして食べ物を食べることができます。一般的には、噛み合わせたときに上と下の歯がまんべんなく接している状態を噛み合わせがいいといいます。逆にどこかに集中して力がかかったり、まったく力がかかっていない歯があることを噛み合わせがよくないといわれます。

人間の噛む力(これを咬合力といいます)は、想像以上に大きくて100キロほどの力がかかります。なのでそれぞれの歯が自分の役割である場所でそこにかかる咬合力を負担することが調和のとれた状態で、歯そのものや歯を支える骨も長く快適に使っていくことができます。噛むことに参加できていない歯があるということは、他に過剰に負担がかかっている歯があるということです。するとその歯は、必要以上に疲れてしまって、歯のすり減りが多くなったり、亀裂が入ったり、根っこが割れたりということがおこる可能性が高くなります。

歯は木のように歯の根っこが骨に埋まっています。なので、垂直の真上からかかる力には比較的強いですが、横からや斜めの力には弱いです。台風の横殴りの風で木が倒れることがあるように、咬合力が斜めからかかることで骨が異常吸収してしたり、歯の表面がくさび形にすりへってしまって知覚過敏を起こすこともあります。

悪い生活習慣の例

また、歯並びは話すことにも関係していますし、見た目にも大きく作用します。歯が標準並んでいることによって、これらのことを標準的にこなすことができます。また、歯が重なりなく並んでいることによって、汚れがたまりにくく歯磨きしやすいというメリットもあります。さらにバランスよくかめるということは、顎の関節の調和がとれ体全体の姿勢やバランスも整いやすいです。少しくらいのズレを適応させる機能は人間には備わっていますが、長期間不調和がおこっていると顎関節に症状が出ることもあります。

現代人は顎が小さい割に歯が大きい傾向があります。歯の大きさは赤ちゃんがお腹にいるときに決まってしまいますし、遺伝の他に何が歯を大きくする原因なのかわからないといわれています。なので、成長期にできるだけ顎を大きくする必要があると考えられます。それには、毎日の習慣としてお口の機能をしっかり動かして使っていくことが、大切だと思います。よく噛んで食事をしたり、いろんな表情をしたり、会話をしたりすることで十分です。マスクでの生活をしているとそれらの機能が低下したり、呼吸がしにくいので成長期のあるお子様は注意が必要です。

悪い舌の位置の例:舌が歯を押してしまいます。

また、歯の位置は舌や唇、ほっぺたの動きや圧が均衡のとれた所で安定します。なので、唇の力が弱かったり、鼻で呼吸ができず口がポカンと開いた状態ですと出っ歯になりやすいです。舌の位置も大切で、歯並びの良い人はお口を閉じている状態で舌が上あごにくっついています。舌の下にあるひだが短い人や筋力の弱い人は舌の位置が下がってしまい、舌の先で上下の前歯の間に舌が入り前歯が噛まなくなってしまったり(開咬)、下の歯が前に出てしまったり(受け口)します。小さいお子様ですと動きの変化だけで歯並びもよくなるケースもありますし、矯正をして歯並びを直しても舌の動きの癖を直さないと後戻りが大きくなります。頬杖も時間が長ければ歯を動かす要因となることもあるので見直してみてもよいかと思います。お口のこととはいえ、骨や筋肉で全身はつながっています。姿勢を整えることや、全身運動をすることも骨や筋肉を強化することにつながると思います。

文/歯科医師 樋口 有里子

 

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