歯の治療に使われる素材について

2024年04月05日

歯の治療には歯の無くなってしまったところを補うために様々な素材が使われています。場所や形、個人によって何が適しているか判断して素材を選びます。

 保険適用で虫歯を詰めるときには、主に2つの素材で詰めます。1つは銀色の金属です。「金銀パラジウム合金」という金と銀とパラジウムなどの金属の合わさったものです。もう1つは白いプラスチック製のレジンと呼ばれる素材です。

金銀パラジウム合金

金属なので強度が強く、割れにくいのが利点です。黒ずみが起こることもあるけれど経年劣化が起こりにくいです。歯より柔らかく噛み合いの歯をすり減らすことはありませんが、金属がすり減って噛み合わせが乱れることがあります。

 虫歯の大きさが大きく嚙む力が多くかかる場合や歯と歯の間の虫歯の時に多く使われます。歯と歯の間は適切な接触圧がないと食べたときに物が歯に挟まりやすくなります。またお口の中でははっきりと目で見えないので模型を作り、個人に適した形につくることでぴったりとあった詰め物を歯科技工士さんに作っていただきます。なので、金属の詰め物を作るときは、『型取り』をして次の治療の時に製作された金属の詰め物をセメントで接着することになります。模型上で作ったものなので、実際の状態と微々たる誤差が生まれるので、歯のきつさや噛み合わせの高さなどを調節してから接着します。金属アレルギーを持つ方には不向きです。また、歯と金属の間は接着材でくっついているだけなので境目から虫歯になることもあるので注意して歯磨きをする必要があります。

 歯の全体を覆うかぶせ物の特徴も詰め物と同様になります。

レジン

 色調が自分の歯の色に似ているので、治療したことが分かりにくく見目がそろうことがメリットです。また、虫歯をとったその日のうちに詰められるので治療回数が少なくて済みます。アレルギーの危険性もありません。ですが、プラスチックのため、強度が弱く、強く噛み合う部分に詰めると割れることがあります。また、歯と歯の間の見えにくい部分を口腔内で正確に詰めることは技術が必要で、接触圧や形態を正確に作り出すことも難しいです。また、口腔内の水分を吸収するので細菌が繁殖しやすく、自分の歯との境目に虫歯ができやすくなります。経年変化によって黄色や茶色っぽく変色します。なので、あまり噛み合わせの力がかからない場所やお口の中でも目で見て治療しやすい場所、比較的小さな噛み合いの面の虫歯を詰めることに適しています。

 被せ物においては近年、この素材で保険適応できる範囲が広まってきました。条件によっては前から6番目の歯まですべて適応できます。7番目の歯も近々適応になる予定です。ですが、噛む力が強い方や、歯の高さが低い場合は割れてしまう可能性があるので慎重に検討することが必要です。

 保険適応外の自由診療で使われる素材として、セラミックとジルコニアがあげられます。費用を自分で全額負担する必要があります。歯科医院によって値段が違います。

 セラミックの長所として、第一に身体全体にたいして悪い影響を及ぼさないということがあげられます。また、歯と同じ色で見た目もよく経年変化も少なく、強度もレジンより硬いです。ただ、薄いと割れてしまうのでセラミックの部分の厚みを確保するために自分の歯を多く削る必要があることが短所になります。

 ジルコニアの長所として、色が歯と同じように白く、ダイヤモンドと同じくらいの硬さを持ち、耐久性に優れています。なので、セラミックよりも自分の歯を削る量が少なくすることができます。しかし、割れてしまう可能性があることはセラミックと同じです。また、非常に硬いため噛み合いの歯に対する負担が大きくなることもあります。

 どの素材も一長一短です。歯の場所やその人のライフスタイルを考慮して、今の生活で無理のない価格、長い目で見た寿命、メンテナンス法などをそれぞれが理解することが大切です。わからないことがあれば、歯科医やスタッフに相談してきめていただきたいです。

文/歯科医師 樋口 有里子

 

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